個人を対象にした具体的な生活習慣の推奨内容

食事＋身体活動の組み合わせが重要

健康的な体重減少・体重維持に特に重要なのは、食事の内容の改善と身体活動量の増加の両方に取り組むことである(1–4)。身体活動量の増加のみでの体重減少への効果は小さい(1,2,4) 。

体重減少には、エネルギー制限が最も重要

エネルギー制限は、体重減少・体重維持に効果があるという多くのエビデンスが蓄積されており(1,2,5–11)、最も重要である。体重減少のための介入では、エネルギー消費量より500 -700 kcal程度エネルギー摂取量を減らすなどが多く行われている(1,7)。

エネルギー制限のために、脂質や炭水化物を減らす

低脂質食 (1,8,12–14)、低炭水化物食(6,15)は多くの介入が行われており、体重減少・体重維持の効果が認められている。栄養不足に注意しつつ、個人に合った方法で脂質や炭水化物の摂取量を減らし、エネルギー摂取量を減らすことが重要である。

野菜・果物、たんぱく質を必要量摂取する

エネルギー制限をしながらも、果物・野菜(13,14,16)、たんぱく質(17,18)などを必要量摂取することは、健康的な体重減少・体重維持のために重要である。

身体活動の総量を増やすことが重要

肥満予防を多くの運動への介入で有酸素運動が実施されており、体重減少の効果のエビデンスが蓄積されている(19–22)。そのほかの運動方法でも体重減少への効果が示唆されている(23)。個人の生活に合わせて身体活動の強度と時間を増やし、身体活動の総量を増やすことが重要である。

個人の行動変容や習慣化のために有効とされる手法

目標設定が効果的

達成すべき行動や結果を目標として定めるなどの目標設定が体重減少に効果的である(5,24–28)。

セルフモニタリングが効果的

体重、食事、運動、自分で立てた目標など、特定の行動や結果を定期的に記録するなどのセルフモニタリングが体重減少に効果的である (5,25–29) 。

ソーシャルサポートが効果的

友人、家族、同僚、仲間、専門職等が、対象者の行動に対して、報酬、行動を実行するためのアドバイスを与えたり、褒めるなどの感情面でのサポートを行うこと（ソーシャルサポ―ト）は体重減少に効果的である(5,24,26–28) 。

理論的枠組についてはエビデンスが不十分

社会的認知理論、計画的行動理論、健康信念モデル、認知行動療法、習慣形成は用いられることの多い理論的枠組であったものの(5,29–33)、理論的枠組をどのように用いたかの記載は不十分であることが多く、どの理論的枠組が効果的かについての結論は出ていない(34)。

その他のアプローチ方法

デジタルデバイスも効果的

対面に加え、デジタルデバイスを用いることも体重減少に効果がある(30,35–46)。こういったデバイスは、情報提供だけでなく、セルフモニタリング(37,39)、ソーシャルサポートの促進(36,40,42)、モチベーションの向上(36,42) など、様々な手法と組み合わせることができる。

経済的インセンティブは現時点では推奨されない

経済的インセンティブの体重減少への効果は小さいと考えられ(47)、介入終了後のリバウンドと関連していたため(48)、現時点では積極的な推奨はされていない。ただし、金額や対象集団などによっても効果が変わる可能性が示唆されており(47)、さらなる研究が必要である。

職場における介入も効果的な可能性がある

エビデンスは十分でないものの、職場における食事、運動への介入は体重減少や体脂肪量の減少に効果的な可能性がある (22,49,50)。ただし、研究数が少ないため、効果的な介入方法を特定するにはさらなる研究が必要である(50)。